分散投資にGPIFのポートフォリオって参考になる?

つみたてNISA等で、インデックス投信の積立をしている方も多いと思います。分散投資は資産形成には必須ですが、ポートフォリオの構築には悩むところ。

資産配分を考える際に、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)のポートフォリオが参考になるのか考えてみました。

 

 

分散投資とは?

念の為分散投資について解説します。ご存知の方は飛ばして下さい。

分散投資とは、資産や地域を分散して投資することです。

資産は株、債券、不動産、コモディティ(金etc)など。地域は日本、アメリカ、EU、新興国などとバリエーションを設けて投資することで、投資で発生するリスク(≒損失)を抑えることができます。

 

投資の世界には「卵は一つのカゴに盛るな」という格言があります。

一つのカゴに全ての卵(=財産)を盛ると、カゴを落とした際に全部の卵が割れてしまう(=破産)一方、複数のカゴに卵を分けて入れておけば、一つのカゴを落としたとしても、他の卵は無事です。

投資でも同じことが言えて、なるべく複数の資産・地域(=カゴ)に分散して投資することで、損失のリスクを抑えることが資産形成のポイントになっています。

 

資産、地域の分散の他に、時間の分散も必要です。1回で全財産を投入してしまうと、高値掴みのリスクがあります。長期に渡りタイミングを分散して資産を購入することも重要です。

GPIFとは?

次に、GPIFについて解説しておきます。年金運用してる法人でしょ?という方は飛ばして下さい。

 

GPIFは、「Government Pension Investment Fund」、直訳すると「公的(Government )年金(Pension)投資(Investment )ファンド(Fund)」になります。

日本語では、「年金積立金管理運用独立行政法人」といいます。

 

GPIFは2006年に厚生労働省所管として設立され、厚生年金・国民年金の運用を担っている組織です。

 

GPIFの投資原則は以下の通り(GPIFホームページより引用)

[1] 年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする。


[2] 資産、地域、時間等を分散して投資することを基本とし、短期的には市場価格の変動等はあるものの、長い投資期間を活かして、より安定的に、より効率的に収益を獲得し、併せて、年金給付に必要な流動性を確保する。

 

[3] 基本ポートフォリオを策定し、資産全体、各資産クラス、各運用受託機関等のそれぞれの段階でリスク管理を行うとともに、パッシブ運用とアクティブ運用を併用し、資産クラスごとにベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保しつつ、収益を生み出す投資機会の発掘に努める。

 

[4] スチュワードシップ責任を果たすような様々な活動(ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した取り組みを含む。)を通じて被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図る。

分散投資を長期に渡って行い年金に必要な利回りを確保するということで、個人投資家としても参考になる部分は多そうです。

GPIFのポートフォリオ

少子高齢化の現代日本社会において、国民の年金を預かっているのですから責任重大です。

そんなGPIFが運用しているポートフォリオを真似れば安定した収益を得られるのでは、と思いこの記事を書いております。

 

冒頭の投資原則によると「基本ポートフォリオを策定」とありましたので、まずはGPIFの基本ポートフォリオを確認します。

 

基本ポートフォリオ

基本ポートフォリオは、以下のような構成になっています。

・国内債券: 35%

・国内株式: 25%

・外国債券: 15%

・外国株式: 25%

GPIFの基本ポートフォリオ 出典:GPIFホームページ

GPIFの基本ポートフォリオ 出典:GPIFホームページ

どの程度の利回りを目指しているのか、以下の記載がGPIFホームページにありましたので、引用します。

 

財政の現況及び見通し(いわゆる「財政検証」)を踏まえ、保険給付に必要な流動性を確保しつつ、必要となる実質的な運用利回り(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの。以下「実質的な運用リターン」といいます。)1.7%を最低限のリスクで確保すること。

 

利回り1.7%ということで、結構、守備的なポートフォリオになっているのですね。

 

また、以下のような年金の積立金額の推移を予想しており、これが作成された2014年の25年後(=2039年頃)までは、年金積立金額が上昇。その後、支払過多が続いていく見込みです。そのため、25年間を運用期間に充てて稼ぎ、以降の払い出し用キャッシュに変換していくプランになります。

年金積立金額のイメージ ※出典 GPIFホームページ

年金積立金額のイメージ ※出典 GPIFホームページ

 

全文は以下のGPIFホームページのリンクにあります。

基本ポートフォリオの考え方|年金積立金管理運用独立行政法人

 

よくGPIFで損失が出たというニュースが出ていますが、このように将来に備えた計画を踏まえた上で、株式に50%(国内株式25% + 外国株式25%)も投資しているので、運用上の一時的なマイナス局面だけ切り取って「こんなに損を出している」と叩くのは如何なものかと思います。

 

年金運用と人生が同じか?

さて、GPIFの運用について理解した上で、自分の資産のポートフォリオをGPIFに合わせるのはナンセンスではないかという気がしてきませんか?

 

GPIFは将来の資金の増減を加味した上で、どの程度のリスクを取り、利回りを得るのかを考えていました。

 

一方で皆さんの人生にはそれぞれの状況があり、会社員なのか自営業なのか、親の介護や子育ての有無なども関係してきます。また、個々人のお金を貯める目的も違います。

本来はこういった要件に応じて運用計画を定めるものであって、GPIFのポートフォリオをただ真似るのは違うかな、と思います。

 

種銭を増やすなら株比率を増やすべき

もしこの記事を読んでいる方がまだ若く仕事ができるのであれば、GPIFのポートフォリオよりもっとリスクを取って株比率を増やすべきです。

 

GPIFのポートフォリオは25年間、将来支払う年金を減らさず利回りを追求するという目的がありました。

国民の大切な財産である年金では、リスクを取りすぎてはならないため、成長を目指しつつリスクも抑える絶妙なバランスを保っています。

また、年金支払に向けて、後半は換金性も高い商品に変更する必要もあります。

 

しかし、個人の若い人であれば、当面仕事をする予定なら出来るだけ資産の成長を重視してもっとリスクを取ってもいいでしょう。

債券は年齢=%比率を保有すればいい、という目安もあります。

25歳の人なら、25%債券、75%株の比率にしておき、年齢と共に債券へ少しずつシフトしていけば安定的にGPIFポートフォリオよりも高いパフォーマンスが出せる可能性が高いです。

また、債券不要論もあり、給与所得である程度キャッシュがあるのであれば、株100%で最大限のパフォーマンスを狙うのもアリです。長期投資の時間と、給与所得という保険があればこそですが。

 

大和のGPIF投信

ただ、全ての人が株式比率を高めてリスクを取りたい訳ではありません。

国の運営するGPIFのポートフォリオと同じ割合で投資したい方は、大和投資信託から「iFree年金バランス」というファンドが出ています。これを購入してGPIFのパフォーマンスを体感するのも面白いかもしれません。

 

ただ、「iFree年金バランス」は0.17%の信託報酬がかかります。

iFreeシリーズは手数料が安いのですが、バラで各アセットクラスを購入したほうが更に経費節減できます。

・eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)…0.16%

・eMAXIS Slim先進国株式 …0.11%

・eMAXIS Slim先進国債券 …0.18%

・eMAXIS Slim国内債券インデックス …0.15%

これを各アセットの割合で購入すると、大体0.14~5%の信託報酬になります。

少しだけ節約できますね。

また、長年運用していると、資産の割合がGPIFポートフォリオと変わってくるため、リバランスが必要です。

儲かっている資産を売却して、足りない資産を購入をすることもできますが、売却益に大して課税されてしまうので、できれば足りない資産を追加購入した方が経費を更に節約できます。